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名古屋地方裁判所 昭和38年(わ)247号 判決

本店所在地

愛知県一宮市神田二丁目一五番地

丸村株式会社

右代表者代表取締役

村橋邦太郎

本籍ならびに住居

右同所

会社役員

村橋邦太郎

昭和二五年四月二六日生

本籍

右同所

住居

名古屋市千種区東明町四丁目五番地

会社役員

村橋実

昭和八年一月二二日生

右被告会社及び各被告人に対する各法人税法違反被告事件につき、当裁判所は検察官三ケ尻俊雄出席のうえ審理を遂げ、次のとおり判決する。

主文

被告丸村株式会社を判示第一の罪につき罰金三〇〇万円、判示第二、第三の罪につきそれぞれ罰金一五〇万円に各処する。

被告人村橋邦太郎を懲役八月および判示第一の罪につき罰金五〇万円、判示第二、第三の罪につきそれぞれ罰金二五万円に各処する。

被告人村橋実を懲役六月および判示第一の罪につき罰金五〇万円、判示第二、第三の罪につきそれぞれ罰金二五万円に各処する。

被告人村橋邦太郎、同村橋実に対し、この裁判確定の日から各三年間右懲役刑の執行をそれぞれ猶予する。

被告人村橋邦太郎、同村橋実において右罰金を完納することができないときはそれぞれ金一万円を一日に換算した期間、当該被告人を労役場に留置する。

訴訟費用は被告人三名の連帯負担とする。

理由

一、罪となるべき事実

被告丸村株式会社は、昭和二六年三月二二日資本金一〇〇万円で設立し(当初の商号は株式会社丸村商店であつたが、その後商号変更により丸村株式会社となり、資本金も増資により八〇〇万円となつた)、愛知県一宮市神田町二丁目一五番地に本店を、名古屋市中区御幸本通り七丁目一二番地に支店を、一宮市浜町六丁目二番地に工場を有し、繊維品等の紡績、染色および製品の卸販売等を業としていたもの、被告人村橋邦太郎は被告会社の代表取締役として被告会社の業務全般の統轄をしていたもの、被告人村橋実は被告会社の常務取締役であつて、被告会社の現金、預金等の管理等被告会社の経理、出納業務等に従事していたものであるが、被告人村橋邦太郎、同村橋実の両名は被告会社専務取締役村橋富士雄、同常務取締役野々垣堅太郎らと共に意思相通じて被告会社の業務に関し、被告会社に対する法人税を免れようと共謀のうえ、

第一、被告会社の昭和三四年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における実際の所得金額は、別紙一の修正損益計算書のとおり三、七八五万四、六〇九円であり、これに対する法人税額は別紙四の税額計算書のとおり一、四二八万四、七四〇円であつたのにもかかわらず、製品等の売上げの一部を簿外となし、架空仕入を計上し、かつ被告会社の預金並びに預金の利息の一部を簿外にする等の不正経理をなし、これにより除外した資金を無記名または架空名義による別途預金として留保する等所得の一部を秘匿したうえ、昭和三五年二月二九日愛知県一宮市明治通り二丁目の所轄一宮税務署において、同署々長に対し、右事業年度における被告会社の所得金額が六六五万八、二一八円であり、これに対する法人税額は二四三万〇、一一〇円である旨を記載した虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により前記正規の税額一、一八五万四、六三〇円の法人税を免れ、

第二、被告会社の昭和三五年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における実際の所得金額は、別紙二の修正損益計算書のとおり二、〇三七万八、二二六円であり、これに対する法人税額は別紙四の税額計算書のとおり七六四万三、七一〇円であつたのにもかかわらず、前同様の方法によつて所得の一部を秘匿したうえ、昭和三六年二月二八日前記一宮税務署において、同署々長に対し、右事業年度における被告会社の所得金額が五九七万一、一二六円であり、これに対する法人税額は二一六万九、〇一〇円である旨を記載した虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により前記正規の税額との差額五四七万四、七〇〇円の法人税を免れ、

第三、被告会社の、昭和三六年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における実際の所得金額は別紙三の修正損益計算書のとおり一、六五六万八、五六五円であり、これに対する法人税額は別紙四の税額計算書のとおり五七七万五、一〇〇円であつたのにもかかわらず、製品の売上げの一部を簿外となし、かつ被告会社の預金並びにその利息の一部を簿外にする等の不正経理をなし、前同様にして所得の一部を秘匿したうえ、昭和三七年二月二六日前記一宮税務署において、同署々長に対し、右事業年度においては被告会社は欠損金額が二七九万一、八五七円であり、法人税額は零(所得税還付額四二万〇、九三〇円)である旨を記載した虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により前記正規の税額との挙額五七七万五、〇二〇円(計算上は五七七万五、一〇〇円であるが、起訴された範囲内でこれを認める)の法人税を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示全部の事実につき

一、被告人村橋邦太郎、同村橋実の当公半廷における各供述

一、第七回公判調書中の証人野々垣堅太郎、第八回公判調書中証人村橋富士雄、第九回公判調書中の右同人および証人村橋広三郎、第一〇回公判調書中の証人村橋真一郎、第一一回公判調書中の証人藤田森市の各供述記載部分

一、被告人村橋邦太郎の検察官に対する供述調書

一、被告人村橋実の検察官に対する供述調書六通

一、大蔵事務官の被告人村橋邦太郎に対する質問てん末書

一、大蔵事務官の被告人村橋実に対する対する質問てん末書九通

判示第一の事実につき

一、大蔵事務官作成の被告会社の昭和三四年度法人税申告書写(記録七一八丁以下)

判示第二の事実につき

一、大蔵事務官作成の被告会社の昭和三五年度法人税申告書写(記録一、一三九丁以下)

判示第三の事実につき

一、大蔵事務官作成の被告会社の昭和三六年度法人税申告書写(記録一、三四二丁以下)

昭和三四年、三五年、三六年を通じ

受入利息勘定につき

一、第一二、一四、三六、三七回各公判調書中証人北野仁俊の供述記載部分

一、北野仁俊作成の昭和三八年一月二五日付調査顛末書(記録三、〇六九丁以下)

一、小林博作の現金、有価証券等現在高確認書(記録一、四八一丁以下)

一、山内義憲作成の右同(記録一、六三〇丁)

一、吉田和男作成の右同(記録一、六四九丁以下)

一、野口邦彦作成の右同(記録一、六九三丁以下)

一、渡辺雅已作成の指定金銭信託(合同連用)元帳写九通(その一ないし九)(記録一、四八四丁以下)

一、右同一二通(その一ないし一二)(記録一、六三一丁以下)

一、村越重理作成の昭和三七年七月一三日付および同年九月一二日右同写各一冊(記録一、七五四丁、一、四九三丁以下)

一、塩田三郎作成の喪失届写一冊(記録一、六四三丁以下)

一、堀口克已作成の指定金銭信託元帳写一冊(記録一、七五一丁)

一、中央信託銀行株式会社名古屋支店作成の指定金銭信託証書写八五通(その一ないしその八五)(記録一、七五〇丁、一、七五五丁)

一、堀勇作成の定期預金記入帳抜萃写一通(記録一、五一六丁)

一、右同人作成の定期預金記入帳写一通(記録一、五一七丁)

一、右同人作成の通知預金記入帳抜萃写一通(記録一、五一八丁)

一、右同人作成の自動継続定期預金記入帳および印鑑票一通(記録一、五二一丁)

一、右同人作成の通知預金記入帳写一通(記録一、七一〇丁)

一、黒部保男作成の定期預金元票(解約済分)一冊(記録一、七五二丁)

一、右同(現存分)一冊(記録一、七五六丁)

一、右同人作成の第四一回協和日の丸定期預金元票一通(記録一、六四八丁)

一、右同人作成の預金担保貸付元票写八通(その一ないし八)(記録一、六七〇丁以下、一、六八〇丁以下)

一、右同人作成の定期預金証書写一冊(記録一、六九二丁)

一、右同人作成の通知預金記入帳写三通(記録一、六七八丁以下一、六八八丁以下、一、七一五丁以下)

一、岩崎久義作成の右同写一通(記録一、六九〇丁以下)

一、内藤房夫作成の定期預金元帳写一冊(記録一、七五三丁)

一、岩田弘作作成の利息計算明細書三通(その一ないし三)(記録一、五三一丁、一、六二七丁、一、六二八丁)

一、右同人作成の定期預金元帳写二二通(その一ないし二二)(記録一、五二三丁以下、一、五三二丁、一、五九三丁以下)

一、右同人作成の大和定期預金記入帳写一通(記録一、五二二丁)

一、河崎嘉雄作成の一般定期預金元帳写一通(記録一、六二九丁)

一、株式会社住友銀行名古屋支店作成の定期預金証明書(記録一、七一一丁)

一、右同作成のリレー定期預金期日表写二通(その一および二)(記録一、七一二丁、一、七一三丁)

一、右同作成リレー定期預金証書写二通(その一および二)(記録一、七一四丁)

一、吉村三郎作成の普通預金勘定照合表二通(その一および二)(記録一、五三四丁、一、五四五丁)

一、吉関治平作成の回答書(記録一、五三五丁)

一、大蔵事務官の田島愛也に対する質問てん末書(記録一、五三六丁以下)

一、大蔵事務官の内田清文に対する質問てん末書(記録一、五四〇丁以下)

一、則武広吉作成の普通預金元帳写一通(記録一、五四六丁)

一、相沢均作成の右同一通(記録一、五五〇丁)

一、小机順次郎作成の右同一通(記録一、五五四丁)

一、魚谷安二郎作成の右同一通(記録一、五五八丁)

一、下山俊夫作成の昭和三七年一〇月一五日付右同二通(その一および二)(記録一、五六二丁、一、五六八丁)

一、右同人作成の昭和三七年一〇月一六日付右同二通(その一および二)(記録一、五七〇丁、一、五七一丁)

一、株式会社協和銀行難波支店作成の右同二通(その一および二)(記録一、五六六丁、一、五六七丁)

一、岩崎久義作成の右同一通(記搬一、五七二丁)

一、株式会社三和銀行本町支店作成の右同一通(記録一、五七三丁)

一、株式会社神戸銀行本店営業部作成の右同一通(記搬一、五七五丁)

一、株式会社三菱銀行大伝馬町支店作成の右同一通(記録一、五七七丁)

一、株式会社三和銀行堀留支店作成の右同一通(記録一、五七八丁)

一、株式会社第一銀行堀留支店作成の右同一通(記録一、五八〇丁)

一、加藤真治作成の右同一通(記録一、五八一丁)

一、稲垣一美作成の右同一通(記録一、五八六丁)

一、日本橋郵便局集配人作成の付箋の貼付された封書一通(記録一、五四六の二丁)

一、荒川郵便局員作成の付箋の貼付された封書一通(記録一、五五〇の二丁)

一、大阪東郵便局員作成の昭和三七年九月二八日付付箋の貼付された封書一通および右同年一〇月二日付付箋の貼付された封書一通ならびに右同年一〇月一〇日付付箋の貼付された封書二通(その一および二)(記録九〇九の二丁、一、五五四の二丁、一、五五八の二丁、一、五六二の二丁)

一、天王寺郵便局員作成の付箋の貼付された封書二通(その一および二)(記録九〇三の二丁、九〇六の二丁)

一、尾西郵便局員作成の昭和三七年一一月三日付付箋の貼付された封書一通および右同年一一月四日付付箋の貼付された封書一通(記録一、五八二の二丁、一、五八六の二丁)

一、黒部保男作成の普通預金受払照合表写一通(記録一、五七六丁)

一、株式会社大和銀行一宮支店作成の入金手形明細書(記録一、五九〇丁)

一、田中四郎作成の通知預金元帳写等一綴(記録二、九六三丁以前)

一、株式会社東海銀行一宮支店作成の通知預金印鑑票写一綴(記録二、九七〇丁以前)

一、右同店作成の約束手形写回答書(記録二、九五四丁以前)

一、押収してある預金計算書四綴(昭和三九年押第一八六号-以下押収物につき同号-証第六五号の一ないし四)

一、右同利息計算書一綴(証第六六号の一)

一、右同印鑑メモ二枚(右同号の二)

一、右同封筒一枚(右同号の三)

一、右同笠洋義雄名義の普通預金通帳一通(証第二五号)

一、右同松長太吉名義の右同一通(証第二八号)

一、右同小島賢二郎名義の右同一通(証第六七号の一)

一、右同小島姓の印鑑一個(右同号の二)

一、右同ビニール袋(協和銀行)一枚(右同号の三)

一、右同尾沢幸二名義の普通預金通帳一通(証第六七号の四)

一、右同尾沢姓の印鑑一個(右同号の五)

一、右同ビニール袋(東海銀行)一枚(右同号の六)

一、右同印鑑二個(丸型および角型各一個)(証第六八号の一、二)

一、右同ビニール袋(神戸銀行)一枚(証第六九号の一)

一、右同約束手形四通(右同号の二ないし五)

一、右同ゴム印二個(黄鶴立名義および梁徳洋名義のもの各一個)(証第七〇号の一、二)

一、右同ビニール袋(カーネーシヨン)一枚(証第七一号の一)

一、右同根本豊名義の普通預金通帳一通(右同号の二)

一、右同根本姓の印鑑一個(右同号の三)

一、右同小倉道夫名義の普通預金通帳一通(証第七二号)

一、右同山中嘉三名義の右同一通(証第七三号)

一、右同八木兼光名義の右同一通(証第七四号)

一、右同印鑑四個(浅野、大脇、加藤、神谷姓のもの各一個)(証第七五号の一ないし四)

一、右同指定金銭信託収益計算書(東海銀行)八通(証第七六号の一ないし八)

一、右同仮預り証一通(証第七七号)

一、右同定期預金メモノート一冊(証第七八号)

一、右同昭和三四年度輸出為替計算書綴一綴(証第一号)

一、右同昭和三四年度元帳(四、五、六月分)一冊(証第三号)

一、右同 (七、八、九月分)二冊(証第四号)

一、右同 (一〇、一一、一二月分)一冊(証第五号)

組合賦課金勘定につき

一、大蔵事務官の渡辺久吉に対する質問てん末書(記録九一三丁以下)

一、押収してある領収証一通(証第三八号の二)(但し昭和三六年分に関する)

接待交際費勘定および旅費交通費勘定については前掲総括証拠の外には特にない。

売上勘定(益金および損金)につき

一、第一二回公判調書中証人真野一郎の供述記載部分

一、原稔の検察官に対する昭和三九年一二月一日付調査報告書(記録二、二五五丁以下)

一、右同人の検察官に対する昭和三九年四月三〇日付上申書(記録二、一四三丁以下)

一、野々垣堅太郎の名古屋国税局収税官吏に対する上申書(記録一、七一七丁以下)

一、坂井和一郎の右同(記録九一六丁以下)

一、加藤儀士郎の右同(記録一、一三八丁以前)

一、今井重男の右同(記録一、四七九丁以下)

一、佐々木史郎の名古屋国税局収税官吏に対する回答書(記録一、〇〇七丁以前)

一、栗田正次の右同(記録一、〇一九丁以前)

一、今井一栄の右同(記録一、〇二〇丁以下)

一、大蔵事務官の安田貢に対する質問てん末書(記録一、三三七丁以下)

一、押収してある昭和三四年度元帳(一、三、五月分)一冊(証第二号)

一、右同 (四、五、六月分)一冊(証第三号)

一、右同 (七、八、九月分)一冊(証第四号)

一、右同 (一〇、一一、一二月分)一冊(証第五号)

一、押収してある昭和三五年度総勘定帳(一、二、三月分)一冊(証第三三号)

一、右同 総勘定元帳(二、四、六月分)一冊(証第三四号)

一、右同 元帳(八、一〇月分)一冊(証第三五号)

一、右同 (七、九月分)一冊(証第三六号)

一、右同 (一一、一二月分)一冊(証第三七号)

一、押収してある昭和三五年度補助簿一冊(証第四一号)

一、右同勘定照合表二通(その一およびその二)(証第五八号の一、二)

一、右同昭和三六年度元帳(一月分)一冊(証第五一号)

一、右同昭和三六年度元帳(本社)(二、四、六月分)一冊(証第五九号)

一、右同 (九、一一月分)一冊(証第六〇号)

一、右同 (八、一〇、一二月分)一冊(証第六一号)

一、右同 (三、五、七月分)一冊(証第六二号)

昭和三四年度について

製品売上勘定中

(一) 輸出売上計上洩れにつき

一、第一〇回公判調書中証人山本圭一、第一一回公判調書中証人竹市弘、第一二回、第一五回各公判調書中証人真野一郎の各供述記載部分

一、真野一郎の検察官に対する昭和三九年一一月二八日付上申書(その一)(記録二、一五四丁以下)

一、押収してある昭和三四年度輸出為替計算書一綴(証第一号)

一、右同 昭和三四年度元帳(一、二、三月分)一冊(証第二号)

一、右同 (四、五、六月分)一冊(証第三号)

一、右同 (七、八、九月分)一冊(証第四号)

一、右同 (一〇、一一、一二月分)一冊(証第五号)

(二) 輸出売上差額計上洩れにつき

一、第一〇回公判調書中証人山本圭一、第一一回公判調書中証人竹市弘、第一二回、第一五回各公判調書中証人真野一郎の各供述記載部分

一、真野一郎の検察官に対する昭和三九年一一月二八日付上申書(その一)(記録二、一五四丁以下)

一、押収してあるノート(オールオーダース一、九六〇)一冊(証第六号)

一、右同 輸出関係書類綴(No.4)一綴(証第七号)

一、右同 (No.5)一綴(証第八号)

一、右同 (No.6)一綴(証第九号)

一、右同 (No.7)一綴(証第一〇号)

一、押収してある毛麻組合関係書類綴(No.3)一綴(証第一二号)

(三) 製品売上計上洩れにつき

一、真野一郎の検察官に対する昭和三九年一一月二八日付上申書(その一)(記録二、一五四丁以下)

一、渡辺才助の大蔵事務官に対する上申書(記録八六二丁以下)

一、渡辺自康の右同(記録八六八丁以下)

一、渡辺満安の右同(記録八七三丁以下)

一、渡辺陽太郎の右同(記録八七八丁以下)

一、押収してある昭和三四年度元帳(一、二、三月分)一冊(証第二号)

一、右同 (四、五、六月分)一冊(証第三号)

一、右同 (七、八、九月分)一冊(証第四号)

一、右同 (一〇、一一、一二月分)一冊(証第五号)

(四) 外貨売上計上洩れにつき

一、第一二回公判調書中証人真野一郎の供述記載部分

一、辻井海三の大蔵事務官に対する上申書(記録九〇一丁以前)

一、二宮章の右同(記録九〇二丁以下)

仕入製品勘定につき

一、真野一郎の検察官に対する昭和三九年一一月二八日付上申書(その二)(記録二、一六三丁以下)

一、押収してある昭和三四年度仕入帳一冊(証第二一号)

一、右同 元帳一冊(昭和三四年一月一日より同年一二月三一日までの分)(証第二二号)

一、右同 昭和三三年度売上帳一冊(証第二三号)

仕入原毛勘定につき

一、真野一郎の検察官に対する昭和三九年一一月二九日付上申書(その三)(記録二、一六六丁以下)

一、天王寺郵便局員作成の付箋の貼付された封書二通(その一および二)(記録九〇三の三丁、九〇六の二丁)

一、押収してある原料仕入帳(昭和三三年一月一日より同三四年一二月三一日までの分)一冊(証第二四号)

一、右同笠洋義雄名義の普通預金通帳一通(証第二五号)

一、右同昭和三四年度支払手形残高表一冊(証第二六号)

仕入染料勘定につき

一、真野一郎の検察官に対する昭和三九年一一月二八日付上申書(その四)(記録二、一六八丁以下)

一、大阪東郵便局員作成の昭和三七年九月二八日付付箋の貼付された封書一通(記録九〇九の二丁)

一、押収してある昭和三四年度染色仕入帳一冊(証第二七号)

一、右同松長太吉名義の普通預金通帳一通(証第二八号)

輸出売上割戻勘定につき

一、第一〇回公判調書中証人山本圭一、第一一回公判調書中証人竹市弘、第一二回、第一五回各公判調書中証人真野一郎の各供述記載部分

一、真野一郎の検察官に対する昭和三九年一一月二八日付上申書(その五)(記録二、一七〇丁以下)

一、被告会社のセールスノート写(翻訳付)二通(昭和三三年一二月二九日付その一および二)(記録二、一七八丁以下)

一、押収してあるノート(オールオーダース一、九六〇)一冊(証第六号)

一、右同輸出関係書類綴(No.4)一綴(証第七号)

一、右同 (No.5)一綴(証第八号)

一、右同 (No.6)一綴(証第九号)

一、右同 (No.7)一綴(証第一〇号)

一、右同 (No.1)一綴(証第三〇号)

一、右同 (No.2)一綴(証第三一号)

一、押収してある毛麻組合関係書類綴(No.2)一綴(証第一一号)

一、右同 (No.3)一綴(証第一二号)

一、押収してあるエキスボートノート一冊(証第二九号)

一、左同輸出申告書一冊(証第八号)

手数料勘定につき

一、第一二回公判調書中証人真野一郎の供述記載部分

一、真野一郎の検察官に対する昭和三九年一一月二八日付上申書(その六)(記録二、一八二丁以下)

一、押収してあるノート(オールオーダース一、九六〇)一冊(証第六号)

一、押収みてある輸出関係書類綴(No.4)一綴(証第七号)

一、右同 (No.5)一綴(証第八号)

一、右同 (No.6)一綴(証第九号)

一、右同 (No.7)一綴(証第一〇号)

一、右同 (No.1)一綴(証第三〇号)

一、押収してある毛麻組合関係書類綴(No.2)一綴(証第一一号)

一、右同 (No.3)一綴(証第一二号)

一、押収してある昭和三四年度元帳(四、五、六月分)一冊(証第三号)

一、右同エキスボートノート一冊(証第二九号)

一、右同勘定照合表四通(その一ないし四)(証第三二号の一ないし四)

昭和三五年度について

製品売上計勘定中

(一) 輸出売上計上洩れにつき

一、第一〇回公判調書中証人山本圭一、第一一回公判調書中証人竹市弘、第一二回、第一五回各公判調書中証人真野一郎の各供述記載部分

一、真野一郎の検察官に対する昭和三九年一二月一日付上申書(その一)(記録二、一八九丁以下)

一、下山俊夫作成の昭和三七年一〇月一六日付普通預金元帳写二通(その一および二)(記録一、五七〇丁、一、五七一丁)

一、押収してある昭和三四年度輸出為替計算書一綴(証第一号)

一、右同昭和三五年度総勘定帳(一、三、五月分)一冊(証第三三号)

一、右同 総勘定元帳(二、四、六月分)一冊(証第三四号)

一、右同 元帳(八、一〇月分)一冊(証第三五号)

一、右同 (七、九月分)一冊(証第三六号)

一、右同 (一一、一二月分)一冊(証第三七号)

(二) 輸出製品売上計上洩れにつき

一、第一〇回公判調書中証人山本圭一の供述記載部分

一、真野一郎の検察官に対する昭和三九年一二月一日付上申書(その一)(記録二、一八九丁以下)

一、押収してある昭和三五年度輸出帳簿一冊(証第三九号)

一、右同請求複写簿(昭和三四年一一月四日より同三五年一二月二三日までの分)一冊(証第四〇号)

一、右同昭和三五年度補助簿一冊(証第四一号)

(三) 製品売上計上洩れにつき

一、真野一郎の検察官に対する昭和三九年一二月一日付上申書(その一)(記録二、一八九丁以下)

一、渡辺才助の大蔵事務官に対する上申書(記録八六二丁以下)

一、渡辺目康の右同(記録八六八丁以下)

一、渡辺満安の右同(記録八七三丁以下)

一、渡辺陽太郎の右同(記録八七八丁以下)

一、小林譲の右同(記録一、三〇一丁以下)

一、渡辺十七三の右同(記録一、三〇七丁以下)

一、渡辺国夫の右同(記録一、三三三丁以下)

一、大蔵事務官の渡辺並男に対する質問てん末書(記録一、三一七丁以下)

一、右同古屋重雄に対する右同(記録一、三二三丁以下)

一、右同小林茂に対する右同(記録一、三二八丁以下)

一、押収してある昭和三五年度総勘定帳(一、三、五月分)一冊(証第三三号)

一、右同 総勘定元帳(二、四、六月分)一冊(証第三四号)

一、右同 元帳(八、一〇月分)一冊(証第三五号)

一、右同 (七、九月分)一冊(証第三六号)

一、右同 (一一、一二月分)一冊(証第三七号)

一、押収してある仕切複写簿(昭和三五年一月一八日より同年五月四日までの分)一冊(証第一三号)

一、右同(同年五月五日より同年九月一七日までの分)一冊(証第一四号)

一、右同(同年九月一九日より同年一二月一二日までの分)一冊(証第一五号)

一、押収してある計算書(メモ)四枚(証第三八号の一)

一、右同人日記控伝票綴(昭和三六年一月九日より同年一二月二八日までの分)一綴(右同号の三)

(四) 損金(二重計上)分につき

一、真野一郎の検察官に対する昭和三九年一二月一日付上申書(その二)(記録二、二一〇丁以下)

一、押収してある昭和三五年度元帳(一一、一二月分)一冊(証第三七号)

一、右同請求複写簿(昭和三四年一一月四日より同三五年一二月二三日までの分)一冊(証第四〇号)

棚卸勘定につき

一、真野一郎の検察官に対する昭和三九年一二月一日付上申書(その三)(二、二一二丁以下)

一、大坪昭の大蔵事務官に対する上申書(記録二、二五三丁以下)

一、大蔵事務官作成の被告会社の昭和三五年度法人税申告書写(記録一、一三九丁以下)

一、押収してある忘備録一冊(証第四二号)

一、右同昭和三五年度在庫原始記録簿一綴(証第四三号)

一、右同昭和三五年度仕入売上補助簿一冊(証第四五号)

仕入製品勘定につき

一、押収してある昭和三五年度輸出帳簿一冊(証第三九号)

一、右同昭和三五年度補助簿一冊(証第四一号)

仕入原糸勘定につき

一、真野一郎の検察官に対する昭和三九年一二月三日付上申書(記録二、二一四丁以下)

一、押収してある昭和三五年度総勘定帳(一、三、五月分)一冊(証第三三号)

一、右同 総勘定元帳(二、四、六月分)一冊(証第三四号)

一、右同 元帳(八、一〇月分)一冊(証第三五号)

一、右同 (七、九月分)一冊(証第三六号)

一、右同 (一一、一二月分)一冊(証第三七号)

一、押収してある昭和三五年度仕入売上補助簿一冊(証第四五号)

一、右同仕入売上帳(昭和三四年一月より同三五年一二月までの分)一冊(証第四六号)

一、右同請求書綴、綴の内一通(証、第四七号)

仕入原毛勘定

益金につき

一、真野一郎の検察官に対する昭和三九年一二月一日付上申書(その四)(記録二、二一六丁以下)

一、中島勝、真野一郎の大蔵事務官に対する調査報告書(記録一、三三六丁)

一、押収してある昭和三五年元帳(八、一〇月分)一冊(証第三五号)

一、右同 (七、九月分)一冊(証第三六号)

一、右同 (一一、一二月分)一冊(証第三七号)

一、押収してある昭和三五年度紡績部仕入帳一冊(証第四八号)

一、右同昭和三五年度仕入売上補助簿一冊(証第四五号)

一、右同昭和三六年度請求書綴一綴(証第四九号)

一、右同昭和三五年度名古屋支店分買掛金残高表一冊(証第五〇号)

損金につき

一、押収してある昭和三六年度元帳(一月分)一冊(証第五一号)

一、右同昭和三六年度仕入帳(毛糸課)一冊(証第五二号)

一、右同昭和三五年度請求書(他社分)綴一綴(証第五三号)

支払工賃勘定につき

一、真野一郎の検察官に対する昭和三九年一二月一日付上申書(その五)(記録二、二一八丁以下)

一、押収してある昭和三五年度元帳(一一、一二月分)一冊(証第三七号)

一、右同昭和三六年度元帳(一月分)一冊(証第五一号)

一、右同昭和三五年度決算関係綴一綴(証第五四号)

一、右同請求書綴(大溝染色株式会社外八名)一綴(証第五五号)

輸出売上割戻金勘定につき

一、第一〇回公判調書中証人山本圭一、第一一回公判調書中証人竹市弘、第一二回、第一五回各公判調書中証人真野一郎の各供述記載部分

一、真野一郎の検察官に対する昭和三九年一二月一日付上申書(その六)(記録二、二二一丁以下)

一、右同人の査察課長に対する調査報告書(記録二、二二五丁以下)

一、被告会社のセールノート写(翻訳付)五通(昭和三五年六月二七日付一通、同年七月二〇日付二通-その一および二、同年一一月八日付二通-その一および二)(記録二、二六〇丁以下)

一、押収してある輸出関係書類綴(ダラムダステイルスダス)(No.9)一綴(証第五六号)

一、右同(No.8)一綴(証第五七号)

一、押収してある輸出関係書類綴(No.2)一綴(証第三一号)

一、右同ノート(オールオーダース一九六〇)一冊(証第六号)

一、右同輸出申告書一冊(証第八〇号)

一、右同昭和三五年度総勘定帳(一、三、五月分)一冊(証第三三号)

一、右同 総勘定元帳(二、四、六月分)一冊(証第三四号)

一、右同 元帳(八、一〇月分)一冊(証第三五号)

手数料勘定(益金および損金)につき

一、第一二回公判調書中証人真野一郎の供述記載部分

一、真野一郎の検察官に対する昭和三九年一二月一日付上申書(その七)(記録二、二二九丁以下)

一、押収してある昭和三五年度補助簿一冊(証第四一号)

一、右同昭和三五年度総勘定帳(一、三、五年分)一冊(証第三三号)

一、右同 総勘定元帳(二、四、六月分)一冊(証第三四号)

一、右同 元帳(八、一〇月分)一冊(証第三五号)

一、右同 (七、九月分)一冊(証第三六号)

一、右同 (一一、一二月分)一冊(証第三七号)

昭和三六年度について

製品売上勘定につき

一、真野一郎の検察官に対する昭和三九年一二月一日付上申書(その八)(記録二、二三一丁以下)

一、渡辺才助の大蔵事務官に対する上申書(記録八六二丁以下)

一、渡辺目康の右同(記録八六八丁以下)

一、渡辺満安の右同(記録八七三丁以下)

一、渡辺陽太郎の右同(記録八七八丁以下)

一、小林譲の右同(記録一、三〇一丁以下)

一、渡辺十七三の右同(記録一、三〇七丁以下)

一、渡辺国夫の右同(記録一、三三三丁以下)

一、大蔵事務官の渡辺金男に対する質問てん末書(記録一、三一七丁以下)

一、右同古屋重雄に対する右同(記録一、三二三丁以下)

一、右同小林茂に対する右同(記録一、三二八丁以下)

一、押収してある昭和三六年度元帳(一月分)一冊(証第五一号)

一、右同 (本社)(二、四、六月分)一冊(証第五九号)

一、右同 (九、一一月分)一冊(証第六〇号)

一、右同 (八、一〇、一二月分)一冊(証第六一号)

一、右同 (三、五、七月分)一冊(証第六二号)

一、押収してある仕切複写簿(昭和三六年一月一〇日より同三月二七日までの分)一冊(証第一六号)

一、右同(同年三月二九日より同年六月二四日までの分)一冊(証第一七号)

一、右同(同年六月二六日より同年一〇月四日までの分)一冊(証第一八号)

一、右同(同年一〇月四日より同三七年一月二六日までの分)一冊(証第一九号)

一、押収してある入日記控伝票綴(昭和三五年一月一六日より同年一二月一二日までの分)一綴(証第六三号)

支払工賃勘定につき

一、押収してある請求書綴(大溝染色株式会社外八名)一綴(証第五五号)

支払利息勘定につき

一、第一二回公判調書中証人北野仁俊の供述記載部分

一、北野仁俊作成の昭和三八年一月二五日付調査顛末書(記録三、〇六九丁以下)

一、黒部保男作成の預金担保貸付金元票写八通(その一ないし八)(記録一、六七〇丁以下、一、六八〇丁以下)

一、右同人作成の通知預金記入帳写三種(その一、二、無番号)(記録一、六七八丁以下、一、六八八丁以下、一、七一五丁以下)

雑損失勘定につき

一、第二六回公判調書中証人原稔の供述記載部分

一、野々垣堅太郎の名古屋国税局収税官吏に対する上申書(記録一、七一七丁以下)

一、押収してある昭和三六年度元帳(一月分)一冊(証第五一号)

一、右同 (本社)(二、四、六月分)一冊(証第五九号)

一、右同 (九、一一月分)一冊(証第六〇号)

一、右同 (八、一〇、一二月分)一冊(証第六一号)

一、右同 (三、五、七月分)一冊(証第六二号)

一、押収してある昭和三六年度売上帳一冊(証第六四号)

(弁護人の主張に対する判断)

弁護人は本件公訴事実中その一部を争い、種々主張するので、以下特に必要と思われる点につき判断を示すこととする。

一、受入利息の帰属について

弁護人は、検察官が本件反則益金中の受入利息について、第一次的には右受入利息の元本たる簿外の無記名または架空名義の各種銀行預金(以下単に本件簿外預金という)が被告会社に帰属するものであるから、その利息もまた被告会社に帰属すると主張し、第二次的には仮に右の元本たる簿外預金中に被告人村橋邦太郎らの個人に属する分が混在しており、それを明確に区分することが不可能であるとしても、その額は全体からみて僅かなものであるし、その簿外預金は全体として被告会社が管理運営していたものであるから、その利息は全て被告会社に帰属するというべきであると主張するのに対し、右簿外預金の大半は被告人村橋邦太郎ら村橋一族の個人または被告会社の傍系会社たる丸邦毛織株式会社に帰属するものであるから、その預金利息は大半がこれら被告会社以外のものに属するものであり、また被告会社が右の預金を管理運営していたこともない、仮にあつたとしても本件受入利息相当額は借入金の使用料として被告人村橋邦太郎に支出させるべきであり、右同額が損金として控除されるべきであると主張する。

よつて判断するに、当公判廷における被告人村橋邦太郎、同村橋実の各供述、第七回公判調書中の証人野々垣堅太郎の供述記載部分、第八回公判調書中の証人村橋富士雄の供述記載部分、第九回公判調書中の右同人および村橋広三郎の各供述記載部分、第一〇回公判調書中の証人村橋真一郎の供述記載部分、第一六回公判調書中の証人服部三郎、同大橋重治の各供述記載部分、第二三回公判調書中の証人村橋すわの供述記載部分等によれば、被告人村橋邦太郎は大正一〇年ころから丸村商店という名義で毛織物の製造販売業を営んできたが、その後昭和一〇年ころからは各種鉱山の経営、山林・土地の造成分譲、計器類の製造販売、ネジの製造販売業等を営み、戦後に至つて、前記丸村商店のストツク品の販売、その他繊維製品の製造販売、喫茶店の経営、冷凍菓子の製造販売業等多種の事業を営み、これらの営業によつて得た資金を基にして、昭和二四年ころ繊維製品の現金販売を目的とする紅屋商店を開業し(名義は村橋富士雄)、同二六年三月、これと並行して繊維製品の製造販売等を目的とする被告会社を設立し自ら代表取締役となり、以後しばらく右紅屋商店と被告会社の双方の営業を併存させていたが、被告会社はそもそもその実体は被告人村橋邦太郎を中心とする村橋一族のいわゆる同族会社であり、営業目的もほゞ同一であつたところから、昭和二九年暮ころ紅屋商店を廃業し、以後被告会社の経営に専念してきたものであることが認められ、更に右証拠および被告人村橋邦太郎の検察官に対する供述書、大蔵事務官の同人に対する質問てん末書、被告人村橋実の検察官に対する昭和三八年二月一一日付、同月一二日付、同月一五日付、同月二二日付各供述調書、大蔵事務官の同人に対する昭和三七年五月二四日付質問てん末書、第一二回、第一四回、第三六回、第三七回各公判調書中証人北野仁俊の各供述記載部分等によれば被告人村橋邦太郎は右のような各種の営業によつてかなりの資産を得、これを基礎として被告会社設立に至つたこと、被告人村橋実は昭和二六年暮ころ被告会社に入社し、以来逐次被告会社の経理関係を担当するようになり、併せて紅屋商店等被告人村橋邦太郎の個人営業に関する経理関係も担当するようになつたものであるが、前記のように村橋一族にとつては被告会社も個人営業も結局利益の帰属するところが同一であるという意識が強かつたところから、両者の経理関係について判然と区別することも、その意思もなく混然と運営してきたものであつて、本件簿外預金中には被告人村橋邦太郎所有の土地売買代金約一、五〇〇万円他これら個人営業によつて得た資金が混入していることが認められる。

しかし更にすすんでその個人に属する金額がどの位あり、そしてそれは預金中どの部分であるかという点については、本件全証拠によるもこれを確定し得ない(弁護人は本件簿外預金の形成過程およびその原資について詳細に主張し、前掲証拠中には一部これに添う供述も見られないではないが、右は何れも推測に基くものであり、しかもその内容自体極めてあいまいもしくは大雑把であつて、当時の申告所得額等に照しても容易に措信し得ない)が、少くとも右のように本件簿外預金中に個人の資金が混入していることが明らかである以上、本件簿外預金の元本がすべて被告会社に帰属するから、その利息も被告会社に帰属するとの検察官の第一次的主張はこれを採用し得ないものといわねばならない。

しかしながら前認定のように、被告人村橋邦太郎、同実をはじめ村橋一族にとつては結局会社の利益は即ち個人の利益であつて、実質において利益の帰するところが同一であるとの考えから、法人たる被告会社の経理と個人営業の経理とを明確に区別することなく被告人村橋実においてそれを統轄して経理を担当してきた事実および本件簿外預金は被告人村橋邦太郎が個人営業として経営していた紅屋商店廃業後である昭和三一年以後急激に増加しており(昭和三〇年末の簿外預金残高は五、一二一万三、七一九円であつたが、同三六年末にはこれが三億二、八九九万六、九六三円となつた-北野仁俊作成の昭和三八年一月二五日付調査顛末書)、被告人村橋邦太郎らは紅屋廃店後特に個人営業をしておらず、傍系会社たる丸邦毛織株式会社、丸村商事株式会社には不正経理がなかつたこと(前掲各証拠)に照らすと右簿外預金の大半は被告会社設立後にその不正経理によつて生じたものと推認できること(仮に弁護人主張のような紅屋商店の廃業当時の在庫品があつたとしてもたかだか四、〇〇〇万円程度であり、右の結果を左右するものではない)、本件簿外預金のあるものはその預金証書の裏面に印を押捺したうえ、何時でも支払を受けうる状態で、あるいは担保預金として銀行の預金担保貸付金元票、定期預金元票に記入されたうえ、被告会社に対する銀行の貸付債権保全のために当該銀行において保管されていたこと(前掲証人北野仁俊の供述、吉田和男作成の現金、有価証券現在高確認書、黒部保男作成の定期預金元票写((現存分))一冊、同人作成の預金担保貸付金元票((その一ないしその八)))、被告人村橋邦太郎、同実ら自身も紅屋廃店後は特別の個人営業を営むことなく専ら被告会社の発展のために努力を払い、被告会社の資金借入れのいわゆる裏担保として被告会社のために利用する趣旨で本件簿外預金形成に努めてきたこと(前掲各証拠中検察官に対する供述調書、大蔵事務官の質問てん末書)、本件簿外預金が解約されて被告会社の当座預金へ入金され、更にこれが被告会社の銀行に対する借入金の返済に充てられている等簿外預金と被告会社の間に資金の出入りが認められること(第三八回公判調書中証人原稔の供述記載部分、田中四郎作成の指定金銭信託元帳等の写等)先にも述べた如く、右預金中どれが被告人ら個人のものであるかということについては、被告人らにおいてきちんと分けるようにされていなかつたのみならず、その中に個人のものが混入しており、従つてその分についての利息は被告人ら個人に属するのであるということを被告人らにおいて意識していたとか、被告人らにおいて事実右利息に当る金員を一部でも受取り、自分ら個人のために費消していたというような事実は、本件全証拠によるもこれを認めることができないこと等の事実を総合して勘案すれば、たとえ本件簿外預金中に個人に帰属するものが少々混入していたとしても、その運用、管理は被告会社において被告会社のためにその収益は専ら被告会社に帰属せしめる意図の下になされていたものと認めるのが相当であるから、その法定果実たる預金利息もまた被告会社に帰属するものと解するのが相当である。よつて検察官の第二次的主張は理由があると思料されるのでこの点についての右弁護人の主張はこれをとることができない。

なお右簿外預金中個人に帰属すべき分については被告会社においてこれを借受金として処理すべきであるとの主張については本件の場合にも述べた如く被告会社と被告人村橋邦太郎ら個人との間においては不動産その他の財産について貸借関係等があつた場合にも賃料、利息等の定めをしたこともなく(大蔵事務官の被告人村橋実に対する昭和三七年五月二四日付質問てん末書等)、またその意思もなく、専ら被告会社の利益を図るためにのみなされていた(前掲各証拠)のであるから、本件簿外預金の利息についても被告人らにおいて利息相当額を会社に対する貸金の使用料として返済を受けるべき旨の格別の意思表示もせず、且つそのような意思を推測せしめる証拠も全くない以上、右不動産等の場合と同様に専ら被告会社のために無料で利用させていたものと解するのが相当であつて、この点に関する弁護人の主張も理由がない。

二、輸出関係計上洩れについて

弁護人は昭和三四年度の製品売上勘定中輸出売上計上洩れ、輸出売上差額計上洩れ(アンダーバリュー歩戻金)、昭和三五年度の製品売上勘定中輸出売上計上洩れ、輸出製品売上計上洩れについて、これらについてはオーバープライス分として相手方へ返還する分(輸出売上割戻金)や手数料、値引分等の損金があるので実質的には右の益金と損金とは同一に帰し、そこに差額が生ずる余地はないのであるが、実質契約証等これを証明する資料が一部粉失したためその分については損金として認められなかつた結果これに差額(昭和三四年度一〇七万二、六三六円、同三五年度四二三万八、六六九円)が生じているのであるから、刑事責任の原則からみてこの部分について損金勘定存在の立証責任を被告人らに課すのは不当であると主張する。

よつて判断するに第一〇回公判調書中証人山本圭一、第一一回公判調書中証人竹市弘、第一二回、第一五回公判調書中証人真野一郎の各供述記載部分、被告人村橋実の当公判廷における供述、同人の検察官に対する昭和三八年二月一五日付、同月一六日付各供述調書によれば輸出取引においては、規制価格(チエツクプライス)が定められている輸出品目をそれよりも低価格で輸出する場合は一応チエツクプライス以上の形式的な契約価格を定めて輸出認証を得て輸出し、一旦輸出先から右の形式的契約価格相当額の支払を受けた上実質契約価格との差額(オーバープライス分)を割戻金として輸出先に返金し、あるいはチエツクプライスで規制されていない自由品目に関して右とは逆に、輸出先において輸入税等の軽減を図つたり、右オーバープライス分を返済する手段として、実質契約価格との差額(アンダーバリユー分)については別途送金を受ける慣行が行われており、被告会社においても右のような方法をとつていたこと、昭和三四年、五年当時、被告会社においてはオーバープライス分の方がアンダーバリユー分よりも多かつたので、両者を相殺したうえ残額のオーバープライス分については輸出先商社員が来日した際直接手渡したり、あるいは輸出先商社の支払指図に従つてその輸出先商社の日本国内における債権者へ直接支払う等の方法によつて決済していたこと、右のような取引の場合、被告会社と輸出先商社との間において形式的契約書のほか、実質的契約書その他数種類の書面の交換がなされていたが、現在はその一部が粉失等により失われており、完備していないことが認められる。

ところで右のような取引形態をとつた場合であつても、損益計算をするについては形式的契約価格を基準とし、これによる売上額を利益勘定としたうえ、実質契約価格との差額相当分については、別途考慮する(オーバープライス分は損金として、またアンダーバリユー分は益金として)のが相当である。

そこで本件公訴事実中これらの計算根拠をみるに、輸出売上計上洩れについては昭和三四、五年の両年度とも被告会社の手許に存した輸出為替計算書綴(証第一号)によつて認められ、昭和三四年度アンダーバリユー分については被告会社の当時の輸出関係担当者であつた竹市弘が記帳していたオールオーダースと題するノート(証第六号)等によつて認められ、昭和三五年度輸出製品売上計上洩れについてはこれも被告会社の手許に存した輸出帳簿(証第三九号)、請求複写簿(証第四〇号)と取引先商社である発昌洋行の補助簿(証第四一号)から認められるところであり、一方損金である輸出売上割戻金、手数料等については前記ノートおよび前記竹市弘が記帳していたエキスポートノート(証第二九号)を基礎とし、一部被告会社の売報等を編綴した輸出関係書類綴等(証第七乃至第一二号)によつて補われているが、右二冊のノートを他の証拠と照合して検討するときわめて詳細且つ正確に記帳されており(このことは前掲証人竹市弘の供述記載部分によつても認められる)、右のように一部記帳されていない部分は主として僅少な取引先に対するものであり、しかもこの分については前記の輸出関係書類綴中の書面等があるので、弁護人主張のように実質契約書等の一部が粉失していたとしても判示のように認定することが不当であるとはいえない。

もつとも仮に本件輸出関係の売上計上洩れ分がすべて右のような損金に当たるものであるとすれば、弁護人主張のように両者に差額が生ずる余地はないはずであるが、輸出売上げ計上洩れ分についてみた限りにおいても、それは輸出した商品の代金が銀行に入金した際銀行においてその一部を被告会社の指示に従つて現金または小切手で東海銀行船場支店及び大阪支店にもうけた被告会社の架空名義の預金口座へ送金していたものであるが、右送金額は端数のない万単位を基準とした金額の例が多く(輸出為替計算書(証第一号)、前記二冊のノート中に記されているオーバープライス分の各金額と比較対照してみても同一性を認め難いこと、右の送金が輸出取引先商社若しくはそれの指示する第三者の口座に直接なされていず、わざわざ架空名義ではあるが被告会社の口座に対してなされた上、割戻金の支払に充てられていたことは推測しうるもののそれ以外の分も含まれていたものと当然推認され、その全てが割戻金に充てられていたものとは考えられない。

告会社の口座に対してなされた上、割戻金の支払をする際にはそこからその都度必要な額を引き出してそれに充てていたことに徴すると、右の送金額が主として割戻金の支払に充てられていたことは推測しうるもののそれ以外の分も含まれていたものと当然推認され、その全てが割戻金に充てられていたものとは考えられない。

よつてこの点についての弁護人の主張は採用しえない。

三、昭和三六年度雑損失について

弁護人は昭和三六年中に被告会社の従業員であつた木村治が被告会社の売上金を横領した額は一九二万円(内訳-愛知県一宮市今井商店分五五万円、山梨県勝山村小林譲分七〇万円、同県川口湖町渡辺満安分二一万円、同渡辺陽太郎分四六万円)であるから、これを損金として認めるべきであると主張する。

よつて判断するに、第二〇回公判調書中の証人杉浦彰の供述記載部分および第二六回公判調書中の証人野々垣堅太郎の供述記載分にはこれに添う供述がみられる。

そして第二六回公判調書中の証人原稔の供述記載部分、野々垣堅太郎の大蔵事務官に対する昭和三七年七月三〇日付上申書、原稔作成の昭和三九年一二月一日付調査報告書を検討すると、弁護人主張の横領金額のうち今井商店分については、木村治の横領事実が認められるが、検察官は本件起訴において横領事実の明らかである五六万五、〇〇〇円および横領または値引分として計上されている二五万四、七四二円の合計八一万九、七四二円について、これを雑損失として損金に計上していることが認められるから、右の二五万四、七四二円について、これを雑損失として損金に計上していることが認められるから、右の二五万四、七四二円についてこれを雑損失とすべきか値引とすべきかの当否は別論として、何れにしても弁護人主張の金額以上が雑損失として認められているからこれ以上損失に計上する必要は見当らない。

次に山梨県の小林譲、渡辺満安、渡辺陽太郎の三名分についてみるに、右三名を含む山梨県地区の取引先に対する被告会社の売上金は被告会社において簿外勘定にしていたものであり、これら簿外売上金は本件反則益金として別表第一、第二、第三の各年度の製品売上計上洩れの金額中に含まれているものであるが、これについての前掲記の各証拠および真野一郎の検察官に対する昭和三九年一二月一日付上申書(その八)によれば、右製品売上額は被告会社の側で記帳していた仕切複写簿と各取引先順において記帳していた帳簿に基き作成された上申書または大蔵事務官に対する質問てん末書を照合したうえ、返品、値引等を控除し、なお両者に差額あるものはより低い金額である取引先側の金額を基準としていることが認められ、また弁護人ら主張のような横領金額があるとすれば支払残高について何らかの交渉が持たれて然るべきところ、そのような事備も認められず、かえつて昭和三六年末における取引残高は取引先側の方が被告会社の側より多いというのであるから(前掲原稔の供述)、弁護人主張の横領事実はなかつたものと認めるのが相当である。前掲の証人杉浦、同野々垣のこの点に関する各供述記載部分はきわめてあいまいであり、他にこれを裏付ける証拠もないので措信できない。

一、法令の適用

法律に照らすと被告人村橋邦太郎、同村橋実の判示第一、第二、第三の各所為はいずれも昭和四〇年法律第三四号附則第一九条、同三七年法律第六七号附則第一八条、同年法律第四五条附則第二項第一一項により、同法による改正前の法人税法(昭和二二年法律第二八号)第四八条第一項、第二一条第一項、刑法第六〇条に該当するが、右被告人両名につき所定刑たる懲役刑および罰金刑を併科することとし、以上は同法第四五条前段の併合罪であるから懲役刑については同法第四七条本文、第一〇条により最も犯情の重い判示第一の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で、罰金刑については右改正前の法人税第五二条本文により各所定金額の範囲内で被告人村橋邦太郎を懲役八月および判示第一の罪につき罰金五〇万円、判示第二、第三の各罪につきそれぞれ罰金二五万円に、被告人村橋実を懲役六月および判示第一の罪につき罰金五〇万円、判示第二、第三の各罪につきそれぞれ罰金二五万円に各処し、情状を考慮して刑法第二五条第一項を適用して右被告人両名に対し、この裁判確定の日から三年間右各懲役刑の執行を猶予し、右被告人両名において右各罰金を完納することができないときは、同法第一八条により金一万円を一日に換算した期間当該被告人を労役場に留置することとする。

被告会社については、被告会社の代表取締役たる被告人村橋邦太郎および常務取締役としてその経理関係等を担当していた被告人村橋実らが共謀して、被告会社の業務に関して判示のような法人税法違反行為をしたものであるから、前記改正前の法人税法第四八条第一項、第五一条第一項により同法第四八条第一項所定の罰金刑を科すべきところ、右は刑法第四五条前段の併合罪であるが、右改正前の法人税法第五二条本文により各所定金額の範囲内で、被告会社を判示第一の罪につき罰金三〇〇万円、判示第二、第三の各罪につきそれぞれ罰金一五〇万円に各処することとする。

訴訟費用については刑事訴訟法第一八一条第一項本文、第一八二条により被告会社及び被告人両名に連帯して負担させることとする。

なお被告会社の昭和三六年度の逋脱額は別紙第四税額計算書のとおり五七七万五、一〇〇円であるが、本件公訴事実となつているのはそのうち五七七万五、〇二〇円であるから、本件犯罪事実を構成するのは右公訴事実の範囲内に留まるものである。

よつて主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 村本晃 裁判官 島田仁郎 裁判官 村田長生)

別紙一

修正損益計算書

丸村株式会社

自 昭和34年1月1日

至 昭和34年12月31日

〈省略〉

〈省略〉

〈省略〉

別紙二

修正損益計算書

丸村株式会社

自 昭和35年1月1日

至 昭和35年12月31日

〈省略〉

〈省略〉

〈省略〉

別紙三

修正損益計算書

丸村株式会社

自 昭和36年1月1日

至 昭和36年12月31日

〈省略〉

〈省略〉

〈省略〉

(注)「当期増減金額」の( )の金額は犯則金額以外の金額であるが当期利益金算出上計算に入れたものである。

別紙四

税額計算書

〈省略〉

〈省略〉

〈省略〉

別紙五

未納事業税計算書

事業年度 自 昭和35年1月1日 至 昭和35年12月31日

内訳

前期の所得金額減少に伴う未納事業税の計算関係は下記のとおり

〈省略〉

事業年度 自 昭和36年1月1日 至 昭和36年12月31日

内訳

前期の所得金額減少に伴う未納事業税の計算関係は下記のとおり

〈省略〉

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